2007年12月24日月曜日

第27回 国際協力フォトコンテスト授賞式での挨拶

去年のことではあるが・・・
関係者・受賞者のみ出席で行われたフォトコンテスト授賞式。
その席で受賞者代表の挨拶を行った私は,こんな事を喋った。

心のやすらぎ」


この度は「第27回国際協力フォトコンテスト」において、理事長賞をいただき、誠にありがとうございます。しかし、この「理事長賞」をいただけたのは私個人の技量ではなく、この写真に写っている協力隊員穴井夢子氏の活動のお陰によるところが大きいことを断っておかなくてはなりません。

この写真は、ブータン王国を青年海外協力隊員経験したうえでウガンダ共和国へ3ヶ月間の「JOCV事業を知る者の目で本当の隊員活動を記録すること」を目的に、視聴覚教育の短期隊員としてウガンダ共和国へ赴任した際に撮影しました。事前に穴井隊員の活動先へ訪問するにあたって、彼女の報告書を全て読んだ上にて訪問を行いました。穴井隊員の赴任から当時に至るまでの苦悩ぶり、活動先での楽しさ、辛さなどが全てつづられている報告書でした。また、現地の方々と力を合わせて活動しているのが伝わってもきます。

私が穴井隊員の任地にてお会いしたときが初対面であったのですが、私が協力隊員経験者ということで、初対面にも関わらずごく普通に接して下さいました。その後、職場を案内していただいたのですが、あちこちにて同僚の方々と挨拶を自然にしているのを目の当たりにしました。そんな彼女を見て「任地にとけ込んで日々の活動を行っているのだ」と報告書で感じたままの彼女を感じました。

翌日、仕事中の所へお邪魔させていただきましたが、昨日の同僚の方々と挨拶を交わしていたように、患者さん達とも挨拶を交わしたり、更には患者さんの様子を確認している姿を目の当たりにしました。報告書で感じていた穴井隊員の「患者さんの視点で仕事をする」姿はそのままでした。今回賞をいただいた写真は、そんな活動中のごく日常的な一瞬を切り取ったに過ぎない一枚です。しかし、私がその場に居合わせることが出来たのは、穴井隊員の活動が一朝一夕のもではなく、日々の積み重ねの上に出来上がった姿であったからだと思います。

ウガンダの病院では看護師の方々が横柄だと聞きました。実際、活動先にお邪魔してみて、それを肌で感じました。その様な看護師の方々に色々してもらっても患者さん達は安心して病気を治すことに専念できるでしょうか。穴井隊員に面倒を見てもらっている時の患者さん達は、安心した穏やかな顔をしていました。「これこそ患者さんと、医療従事者のあるべき姿だろう」と感じました。人間は不安な要素が少なければ少ないほど幸せを感じやすいと思います。入院している患者さん達に心の安らぎを提供することによって、病気を治すことに専念できる環境を穴井隊員は作っていたと感じました。

ウガンダへの派遣中、多くのウガンダ国内協力隊員任地を訪問させていただきましたが、隊員のカウンターパートや、隊員と関わる現地の方々との関係は穴井隊員が特別であったのではなく、他の協力隊員も穴井隊員と同様に現地の方々と密接に関わって“草の根の活動”している姿を目の当たりにしました。その姿を全てお伝えすることは出来ませんでしたが、少しでも協力隊員の姿を見ていただきたく、この写真を撮ろうと思いました。

写真
同期スリランカ隊員
写真
同期スリランカ隊員

私が隊員であったブータン王国。また、同期隊員が活動していたそれぞれの国でもこの写真と同じ様なことが起きているはずです。青年海外協力隊が派遣されている各地でも同じ様なことが起きているはずです。隊員経験者として、経験者の視点にてこの写真を撮り、みなさんへ活動の実態の一部でもお伝えできればと思います。

写真
後輩のブータン体育隊員

私の隊員時代、私の生徒に「僕が中学生の時に日本人に体育を教えてもらった。先生はその人と友達か?」と聞かれました。もちろん私はその先輩隊員とは友人ではありませんが、先輩隊員の活動は教え子や関わった人々の中で小さな変化として生きている気がします。その小さな変化に私も更に変化を加えることによって、大きな変化へと繋がる継続的な変化の手助けになったと思います。この様に、協力隊員には国レベル政府間で行うような大きな変化を作り出すほどの力はないと思います。しかし、大きな変化は時として反発を招く場合があります。協力隊員は小さな変化を地味に隊員が何代も派遣されることによって、継続して変化していると思います。一代では小さな変化であっても何世代も続くことによって、いつの日か大きな変化となっているでしょう。小さな変化であれば反発を招く可能性も小さく、持続しやすいと思います。継続して行うことによっていつの日か、不安の少ない社会を作り出し、日々幸せを感じられるような平和の世の中を作り出すことに役立っていると思います。

以上をもちまして受賞の挨拶とさせていただきます。


※トップの写真以外はコンテストとは関係ありません